頑張れリーマンブログ

根掘り葉掘りヒアリング

2011年03月08日

専門家は、経験に裏打ちされた自分の勘を信じていた。「フェリーに乗って、衣笠に一人で市場調査に行くとき、船べりで海を見ながら、『さあ海を渡って、これから勝負だ』という気持ちになりました。いまは新規進出に際してはマーケティング部が事前に綿密な調整を行っていますが、当時は自分の感覚だけが頼りです。ここに出そうかなと思うと、デパートの屋上からずーっと街の雰囲気を眺めて、人気に勢いがあるかどうかを感じとる。非常に素朴なやり方ですが、街の雰囲気を自分の肌で感じ取りながら、『いける』と思うところには出してきました」久里浜港に降り立った専門家は、幕末に黒船で来航したペリー提督の心境だったのだろう。土地勘のなさ、地元情報の少なさは、情報収集で補った。活字から得られる情報だけではなく、地元の人の感覚も重視したいと考えた専門家は、衣笠に教室を出すに際して、地元の主婦を事務員として雇い、PTA情報から町内のよもやま話、噂話にいたるまで、根掘り葉掘りヒアリングした。その一方で、講師の学生からは同業他社の情報を仕入れる。現地になじむため、教室がオープンしてからしばらくの間、専門家は衣笠の教室に寝泊りした。朝、千葉の自宅を出て、フェリーで久里浜へ渡り、衣笠の教室に行って仕事をする。夕方から生徒が来て、最後のコースが終わるのが午後九時過ぎ。それから近所の銭湯に行き、真っ暗になった教室に戻ると、机を寄せ集めてベッド代わりにし、マットレスを敷いて休む。翌朝、始発電車で久里浜まで行き、久里浜からフェリーに乗って千葉に戻り、一日仕事をする。またその翌日、衣笠に行く。そうした繰り返しが、半年ばかり続いた。「新しい場所で教室をはじめるにあたって、情報も求めなければいけませんし、室長候補や現地スタッフに、こちらの考え方とかシステムを徹底的に教え込まなければいけません。現地ではいろいろな確認作業も必要ですしね。とてもおもしろかったですが、いくらなんでも、これでは私の体が持ちません。まあ、衣笠は例外ですけどね(笑)」